キリムとの出会い
キリムとの出会いは・・・・シルクロードをたどってアジア放浪の旅の途中で・・・・などと劇的なエピソードを語りたいのですが、残念ながら私の場合はごくありふれた日常の平凡で些細な出会いから始まりました。
30年ほど前のある休日、都内に買い物に出掛けた帰り道にどこかのテナントビルの一角に何かのブランド服のバーゲン会場らしき所が目に留まりました。
あまり興味はなかったのですが、帰り道のついでだからとふらっと中に入ってみました。
会場にはそれなりの商品が溢れており人だかりがしていましたが、特に欲しいものもなくブラブラと奥に歩いていくと、一番奥の一角に周囲とは何か違う色合いが見え、独自の雰囲気が感じられて吸い寄せられるように近付いて行きました。
その奥のコーナーには壁に何枚かのキリムが貼られ、テーブルには畳んだキリムが無造作に積まれていました。
当時はそれがキリムと呼ばれるものだということすら知らず、ただ目に付いたので何となく見ただけだったのです。
そのコーナーにいたイラン人の説明を聞いて、これが「キリム」と呼ばれる手織りの敷物で、思いのほか高価なものであることを知りました。
何枚か見せられたうちの1枚が心に残り、何故かその場で衝動買いをしてしまいました。
それはイランのシャサバン族のスマック織で、150cmx100cm位の小さめのものでした。
現在よくあるシルクのスマックではなく、ウールの新しいものでしたが、当時はオールドキリムなど無論見たこともなく、その場にある中では最も気に入ったと感じたものでした。
オールドやアンティ―クではありませんが、確かにスマック織は細かく手が込んでおり、生まれて初めてキリムを目にした私にとっては充分過ぎるインパクトのあるものでした。
今ならば絶対に買わない価格とグレードのまだまだ新しいキリムでしたが、この1枚との出会いがなかったら、今でもキリムというものの存在すら知らなかった可能性もあります。
最初は高い月謝を払ってしまったようですが、これがきっかけでキリムというものを知り、興味が沸いてその魅力に取り憑かれていったのです。
素晴らしきキリムの世界の扉を開けてくれたこの1枚のキリムとの偶然の出会いに、今ではとても感謝しています。
キリムのパワー | ||||
キリムにはパワーがあると私は信じています。 | ||||
こう書くとキリムに傾倒し過ぎて思い入れが強過ぎるせいだと感じられるかも知れませんが、ずっとキリムを見ていると確かに様々な波動を感じることがあるような気がする | ||||
のです。 | ||||
その何となく感じられるオーラのようなものが自分の波長に合ったとき、そのキリムの | ||||
魅力に取り憑かれるのでしょうか。 | ||||
遊牧民の誇り高い民族アイデンティがプライドを込めて織り込まれていること、大切な | ||||
家族への愛情や大切なものを守るための祈りを織り込むこと、神への厚い信仰心を | ||||
織り込んでいることを考えればパワーが織り込まれているのは当然かも知れません。 | ||||
ましてキリムの大多数の織り手は、この世で最もパワフルなエネルギーを持つ女性達 | ||||
なのですから。 | ||||
そしてそのパワーは、織り手の祈りとともに自ら紡いだ堅牢な糸の繊維の奥深くまで | ||||
宿り、膨大な時間を越えて依然として存在しつつ、現在までも発散させ続けているよう | ||||
に思えてなりません。 | ||||
かのフロイトもキリムや絨毯の持つエネルギーを認めていたようで、精神科のカウン | ||||
セリングの部屋には壁一面にキリムや絨毯が貼られていたといいます。 | ||||
キリムの発散するエネルギーは、心を病んだ患者さんへの癒し効果を発揮するパワ | ||||
ーがあったのでしょうか? |